雅~みやび~
今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」では、度々雅楽が演奏されている場面を見かけます。
平安時代、貴族の生活の中で雅楽がどのような場面で演奏されていたのか垣間見ることができます。
奈良時代には、雅楽は主に儀礼や祭祀で演奏されていたのですが、平安時代になると天皇や貴族も楽器を演奏するようになりました。折りにふれて合奏をしたり、時には帝の前で演奏することもありました。楽器が演奏できることは貴族にとってステイタスであり、男女に関わらず大切な教養のひとつでもあったのです。
またドラマの中にも登場します紫式部が書いた「源氏物語」には、雅楽のことがよく出てきます。例えば最初の頃の段の中に「紅葉賀の段」と言うところがあり、その段の中で青海波という曲が舞われたことが出てきます。実際に現代にもその曲は存在し、舞もあり、古典文様としても有名であります。他にも、迦陵頻や胡蝶も出てきて当時から演奏されていたことを知ることができます。
そして清少納言の『枕草子』にも雅楽に触れた部分がいくつもあります。なかでも、清少納言が楽器の趣味について語った部分はよく知られています。『笛は、横笛、いみじうをかし。遠うより聞ゆるが、やうやう近うなりゆくもをかし。近かりつるがはるかになりて、いとほのかに聞ゆるも、いとおかし。』(笛は横笛がとてもよい。遠くから聞こえてくる音が少しずつ近づいてくるのも趣があるし、近くで聞いていた音が遠のいてかすかに聞こえるというのも、とても興がある)『笙の笛は、月のあかきに、車などで聞きえたる、いとをかし。』(笙は月の明るい夜に車の中などで聞くことができると、とても興がある) どちらも自然の情景に合わせて楽器の音色を楽しむ、平安貴族の感性がうかがえる文です。笛が近づき、また遠のいていく音色に耳をすませる感性は、現代を生きる私たちにとってもとても共感できます。
タグ:take